つわりの原因が解明されつつあるようです
こんにちは!愛知県名古屋市の産業医、馬渕青陽です。
最近、働きながらもつわりで苦しんでいる妊婦さんによく出会います。
産業医としては、労働基準法や男女雇用機会均等法などの法律や、
主治医に発行いただいた母性健康管理指導事項連絡カードを参考にしながら
必要な就業配慮について検討するのですが、
私が医学部生だった10年ほど前には、つわりの原因は不明と習いました。
しかし、最近、永らく原因不明だったつわりの原因が解明されつつあるようです。
2023年末にネイチャーに掲載された論文ですが、
胎児から産生されるGDF15というホルモンがつわりと関係しているという内容です。
妊娠中のGDF15の量が増加することによって悪心・嘔吐が起こるようで、
もともと体質的に妊娠前からGDF15の値が高い人では悪心・嘔吐は起きにくくなるとのことです。
Fejzo M, Rocha N, Cimino I, Lockhart SM, Petry CJ, Kay RG, Burling K, Barker P, George AL, Yasara N, Premawardhena A, Gong S, Cook E, Rimmington D, Rainbow K, Withers DJ, Cortessis V, Mullin PM, MacGibbon KW, Jin E, Kam A, Campbell A, Polasek O, Tzoneva G, Gribble FM, Yeo GSH, Lam BYH, Saudek V, Hughes IA, Ong KK, Perry JRB, Sutton Cole A, Baumgarten M, Welsh P, Sattar N, Smith GCS, Charnock-Jones DS, Coll AP, Meek CL, Mettananda S, Hayward C, Mancuso N, O'Rahilly S. GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy. Nature. 2024 Jan;625(7996):760-767. doi: 10.1038/s41586-023-06921-9. Epub 2023 Dec 13. PMID: 38092039; PMCID: PMC10808057.
この研究結果から、妊娠前にGDF15の値を高くしておくことによってつわりを防ぐという考え方が生まれており、
実際にマウスでは妊娠前にGDF15を注射することで食欲低下を抑制できることが確かめられています。
人間の場合、一部の糖尿病治療薬(メトホルミン)はGDF15を増やすことが知られており、使用が検討されています。
将来的には、つわりもコントロールしながらお仕事ができるようになるのかもしれませんね。