リワークってとっても大事
こんにちは!愛知県名古屋市の株式会社中部労働衛生コンサルタント事務所 代表産業医の馬渕青陽です。
最近、うつ病や適応障害による休職者への対応について、企業の方からご相談をいただく機会が増えてきました。
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どのように復職対応したらいいか分からない
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主治医は「復職可能」と言っているが、本当に復職させてよいのか?
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同じような休職・復職を何度も繰り返していて、なんとか流れを変えたい
こういったご相談をいただく中で、私がよくお勧めしているのが**「リワーク」**です。
今回は「リワークって何?」という方にも伝わるよう、分かりやすくまとめてみました。
必要な方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
◆ リワークとは?
リワーク(return to work)は、主にうつ病や適応障害などのメンタル不調からの職場復帰を支援するためのプログラムです。
単に「治ったから戻る」ではなく、
再発を防ぎ、無理なく職場に馴染めるように生活リズムや働く力を少しずつ整えるための時間です。
実施はリワーク専門施設やクリニック併設の機関などで行われることが多く、期間は3ヶ月〜半年ほどが一般的です。
◆ リワークではどんなことをするの?
プログラムの内容は施設ごとに異なりますが、主に以下のような支援があります。
▶︎生活リズムを整える(通所習慣)
▶︎グループワークや軽作業による対人・集中トレーニング
▶︎ストレスマネジメントや自己理解の促進
▶︎主治医・産業医・会社との連携支援
私は、リワークを「復職の準備」というだけでなく、
**「その人が自分自身のことを深く見つめる時間」と捉えています。
◆ なぜ“リワーク”が必要なのか?
理由はたくさんありますが、ここでは特に重要な3つをお伝えします。
① 復帰後の定着率が高まるから
厚労省の研究[1]によれば、メンタル不調からの復職後1000日経過時点での就労継続率は、
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リワーク利用者:約70%
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非利用者:約50%
と、大きな差が出ています。
つまりリワークは、仕事を“続けられる状態”にするために重要なプロセスなんです。
② メンタル不調から回復しているかどうかを見極めるため
本人の表情や言葉だけでは、復職可能な状態かどうかは分かりません。
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朝決まった時間に起きる
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人と関わりながら作業する
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締切や責任を伴う仕事に向き合う
こうした“社会的な回復”には、内側のエネルギーが必要です。
無理をして戻っても、すぐに再発してしまうケースも少なくありません。
そして、体調以上に波が大きいのがメンタルです。
だからこそ、メンタルの状態は時間をかけてみていくことが大切になります。
③仕事のパフォーマンス向上やプライベートにおいても大いに役立つから
コミュニケーションや、考え方・捉え方って、人生に大きな影響を与えるのに、学べるところが少ないと感じませんか。
なんで自分の伝えたいことが伝わらないんだろう。なんで言いたいことが言えないんだろう。
そういった悩みはありませんか。
リワークでは、座学や実際に他の通所者との方とのコミュニケーションを介して、
それぞれのコミュニケーションや考え方・捉え方の癖を見つめて、どうしたらうまくいくのか実践することができます。
◆ ご本人も、企業側も“一人で抱え込まないこと”
リワークの利用も含めて、復職は、本人にとっても、企業にとっても、大きな節目です。
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いつから職場に戻ればいいのか
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どこまで業務を任せていいのか
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再発しないために何ができるのか?
こうした不安は、ごく自然なもの。
だからこそ、専門家と一緒に進めていくことがとても大切です。
当社では、主治医の意見も尊重しながら、産業医として、
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復職時の配慮事項のアドバイス
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復職面談の同席
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復職後のフォローアップ
などを継続的にサポートしています。
◆ 最後に:リワークは「再出発」のための準備室
私がこれまで多くの復職に関わってきて感じるのは、
**「人は誰でも、もう一度立ち上がる力を持っている」**ということです。
リワークは「働けるかどうか」を測る場ではありません。
「安心して、自分らしく働く力」を育て直す場所です。
もし今、職場復帰やその受け入れについてお悩みの方がいらっしゃれば、
ぜひ一度、chubu.sangyoui@gmail.com までご相談ください。
ご本人も、企業の皆様も、安心して進んでいけるよう、全力でサポートさせていただきます。
※参考文献
[1] 大木洋子・五十嵐良雄 (2012)「うつ病患者に対する復職支援体制の確立」厚労省研究報告書