「もしかして“腸”が原因?脳と心に深くつながる“脳腸相関”という話」
こんにちは。
株式会社中部労働衛生コンサルタント事務所 代表産業医の馬渕青陽です。
今回は、私がメンタル不調の方の対応をするときに、
とても大事にしている考え方を共有しようと思います。
それが──
**「脳腸相関(のうちょうそうかん)」**という考え方です。
◆「脳腸相関」ってどういうこと?
一見、関係なさそうな“脳”と“腸”。
でも実はこの2つ、お互いに情報をやり取りしている臓器なんです。
たとえば──
▶︎ストレスを感じたとき、お腹が痛くなったり下痢をしたことありませんか?
▶︎緊張すると、腸が動かなくなって便秘になる人もいますよね。
これはすべて、脳からの影響が腸に現れている証拠です。
でも逆に、腸の状態が悪いと、脳や心に影響を与えることもあるんです。
実際に、うつ病や認知症など、脳の病気の進行に腸の状態が関連する病気や
過敏性腸症候群のように、胃腸の病気に脳の状態が関わる病気もあります。
◆ 腸は「第二の脳」?
腸には、なんと1億個以上の神経細胞があります。
この数は、なんと脊髄よりも多いんです。
だからこそ腸は「第二の脳」とも呼ばれています。
腸は自律神経を介して脳とやり取りしていることや
脳内のホルモンの材料を吸収していることがわかっています。
また腸内細菌とも関係して、免疫系を調整していることも知られています。
自律神経も、ホルモンも、免疫系も、気分やメンタルに直結しています。
つまり──
腸の状態は、私たちの気分やメンタルに直結しているということ。
まさに、**「脳と腸が影響し合っている=脳腸相関」**という概念です。
◆ 腸の状態はメンタル状態のサイン
産業医として面談をしていると、
▶︎メンタル不調を抱える人
▶︎慢性的な疲労やだるさを感じる人
▶︎気分の落ち込みが見られる人
こういった方の多くが、
**「お腹の調子がよくない」**
とおっしゃることが多いんです。
便秘の方も、下痢の方もいますし、
急に便意をもたらして困っているという方もいます。
◆ “腸から整える”3つの習慣
あなたの胃腸の状態はどうでしょうか?
胃腸に対して優しい生活習慣でしょうか?
それとも胃腸に無理をさせているような生活習慣でしょうか?
まずは、自分の胃腸の状態と生活習慣に目を向けてみてください。
▶︎食事のタイミングがバラバラ
▶︎甘いものや脂っこいジャンクフードに頼ってしまう
▶︎ストレスで過食 or 食欲がなくなる
これらは、すべて「腸のバランスを崩している」かもしれません。
ではどうしたら、脳と腸のバランスを整えられるのでしょうか?
私が現場でもよくお伝えしている、誰でも今日からできる3つのことをご紹介します。
① 発酵食品や食物繊維を摂る
ヨーグルト、納豆といった発酵食品や、
野菜、海藻のように水溶性食物繊維が多い食品を摂ることで、
腸の働きが良くなり、腸内細菌に善玉菌が増えることが知られています。
② 自分に合う食品を摂る
食品が腸に合うかどうかは個人差が大きく、
何を食べたら調子が良くなり、何を食べたら調子が悪くなるのか
自分で試してみることがとても大事です。
広く言えば胃腸に負担をかける小麦のグルテンや、
アレルギー的な要素といったことも含まれてくると思います。
例えば私でいうと「うどん」を食べると胃腸の調子が悪くなりムカムカするし、
「生のえび」を食べると喉が痒くなってしまいます。
「キムチ」を大量に食べるとお腹を壊します。
そういったことをあなた自身が知るのが大事です。
③ しっかり睡眠をとる
3食しっかり食べる、寝る直前にご飯を食べないといったことも大事なのですが、
睡眠をしっかりとるというのがとても大事です。
睡眠でリラックスすることにより気分も安定しますし、
腸からアルファディフェンシンという物質が出て腸内環境も整うといった研究があります。
◆ メンタルの不調は「腸」が教えてくれているかもしれない
私たちは、ついメンタルの不調を“気分”だけで考えすぎてしまいがちです。
でも、本当のメンタル不調のサインは、“お腹”が先に出してくれているかもしれません。
お腹の声をちゃんと聞いてみる。
それだけでも、日常が少しずつ整っていくはずです。
「頭と心と体」をまるごと整えていく。
それが、私が考える**“本当のメンタルヘルス”**です。
ぜひ、今日からあなたも自分の腸に優しくしてあげてくださいね。