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災害が起きた時の最低限の応急手当

[2023.10.27]
こんにちは!名古屋市の産業医、中部産業医・労働衛生コンサルタント名古屋の代表の馬渕です。
今回は、大災害が起きた時の最低限の怪我の応急手当についてお話ししようと思います。
気象庁によると、私が住んでいる名古屋市では、今後30年の間に南海トラフ自身という大地震が70-80%の確率で起きるそうです。内閣府によると、死者・行方不明者が30万人を超えるという想定もあります。その際に負傷者は60万人を超えるそうで、病院自体も被災しますので、怪我人に対して治療が行き届くことがないかもしれません。

過去地震最大モデルの震度分布

       (愛知県Hpより)

今回の記事では、災害時に最低限覚えておいていただきたい応急手当について説明します。応急手当というと、医療物品の準備が必要かと考えてしまいますが、必要な物品は、清潔な水、清潔な布、あればプラスチック手袋とマスクぐらいの話です。今回の記事を読んでいただくと災害時に大いに役立つと思います。

満タンのペットボトルのイラストガーゼのイラスト使い捨て手袋のイラスト

はじめに

災害が起きた場合、たくさんの怪我人が出ることと思います。大量に怪我人が出た場合、医療関係者は「トリアージ」というもので患者さんの重症度を分けて、緊急性が高い人から対応します。

「トリアージ」では「黒」「赤」「黄」「緑」に分かれますが、「黒」は亡くなっているかそれに近い状態、「赤」はただちに処置をしないと命に関わる状態、「黄」は現時点で命に別状はないが歩けない状態、「緑」は命に別状がなく歩ける状態となります。医療従事者は「赤」の人の救命に全力を注ぎます。「赤」の人数が多いと、「黄」や「緑」の人に手が回りません。ですので、言い方はとても悪いのですが、災害時には、命に別状がなければ、多少皮膚が裂けて出血していようと、多少骨折していようと後回しにされてしまう可能性が非常に高いのです。

トリアージタッグのイラスト(数字) | かわいいフリー素材集 いらすとや

とはいえ皮膚が裂けて出血していたり、骨折していたりする人も放置していい訳ではありません。医療の専門知識がなくともできる範囲で応急処置をすることで、傷が悪化したり、細菌に感染して命に関わったりする可能性を減らすことができると思います。

応急手当の流れ

今回、応急手当の対象とするのは、意識がある人に対する「出血」と「骨折・捻挫」の2つです。
この2つは、①医療従事者でなくとも見て判断しやすい②簡単な初期対応でも悪化を予防できるという特徴があり、今回取り上げようと思います。

流れとしては、

①救助者の安全の確保

②救助者の感染防護

③出血している場合は圧迫止血

④止血できたら傷口の洗浄

⑤骨折や捻挫を疑う場合は固定

の5つです。

①救助者の安全確保

応急処置をする際に、一番注意しなければならないのは、二次災害を防ぐことです。この場合は、救助者に危険が及ぶのを避けるということを意味します。

怪我をした人に近づく前に、周囲の安全確認をして、倒れそうなもの、崩れそうなものを確認します。特に地震の場合は余震が起こる可能性があるので注意が必要です。救助するのに危険すぎると思った場合には待つという判断も必要です。

まずはご自分の身を守ってください。また、怪我をしている人を安全な場所に移す必要が出た時には、首が動かないように支えながら移動することが望ましいです。首を大きく動かしてしまうと、脊髄を傷つけてしまう恐れがありますので注意が必要です。担架や毛布などがあれば、首を安定させられるのでなお良いです。

②救助者の感染防護

怪我をした人が出血している場合、血液を介して感染症がうつる可能性があります。ですので、ビニール手袋などで救助者は感染防護をすることが望ましいです。万が一血液が付着した場合には水で洗浄しましょう。ビニール手袋がない場合は、ビニール袋などを使って、直接血液に触れないように工夫してみてください。

掃除の格好のイラスト「マスクとゴム手袋」

③出血している場合は圧迫止血

止血に関して、まずは直接圧迫止血を行います。まずは出血部位をできるだけ心臓より高い位置に上げて、血流を抑えます。その上で傷口の上から清潔なガーゼや布などをあてて、手で圧迫する方法です。大体の出血はこれで止まりますが、15分〜30分ほどかかることもありますので、すぐに圧迫を外さないように注意が必要です。もし鼻血が出ている場合は、鼻の横の膨らみ(鼻翼といいます)を両側から圧迫するのがスタンダードです。

   鼻血の止血のイラスト

④止血できたら洗浄

傷口に対して止血ができた場合、次は傷口から細菌感染することが問題になります。できるだけ清潔な水(水道水があればそれでも構いません)を傷口にかけて洗いましょう。2Lぐらいが一つの目安になります。もし砂や石などが入ってしまっている場合は可能な範囲で流して除去しましょう。

⑤骨折・捻挫が疑われる場合の固定

そして、手足があらぬ方向に曲がっていたり、関節を曲げると痛いなどの症状があれば骨折や捻挫をしているかもしれません。骨折や捻挫がある場合、まずは固定しなければなりません。添木の代わりになるもの(例えば傘などでも構いません)をあてて、包帯もしくはバンダナやハンカチ等で軽く縛って動かないように固定しましょう。後ほど腫れてくる可能性があるので、あまり強く巻きすぎないことが重要です。

応急処置のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

応急手当に伴う責任

(私は法律に関して専門外ですので、参考に留めていただければと思います。)

応急手当を行うことで、失敗したら訴えられてしまうのではないかと思い、今まで説明した応急手当に尻込みしてしまう方もいるのではないでしょうか。

ただ、今まで紹介した応急手当の内容はいずれも基本的なもので、過失は起こりにくい内容を選んでおりますし、

一般の方が善意で行った応急処置に関しては、刑法第37条の緊急避難の規定や、民法第698条の緊急事務管理の規定をもとに、悪意または重過失でなければ責任を負わないとされています。

ですので、災害などで居合わせた場合に、今までお話ししてきたような応急手当をして責任を問われるリスクは相当に低いものと思います。

おわりに

日本は地震多発地帯に位置していますので、近い将来に地震が来て、たくさんの負傷者が出るかもしれません。

最低限の応急手当について理解しておくことで、数多くの方の怪我の悪化を防ぐことができるでしょう。

この記事が一人でも多くの方の健康に役立つことを願っています。

 

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